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大阪の45歳の被告が窃盗などの罪に問われた事件では、警察が被告や仲間の車にGPS端末を取りつけて居場所を把握していましたが、裁判所の令状を取らずに実行していたため、違法かどうかが争われています。

1審は「対象者のプライバシーが大きく侵害されるので強制捜査にあたり、令状なしで行ったのは違法だ」と判断しましたが、2審は強制捜査かどうかは判断せず、「重大な違法はない」として弁護側の主張を退けていました。

これについて、最高裁判所の15人の裁判官全員が参加する大法廷で弁論が開かれ、弁護側は、裁判所のチェックを受けていないので違法で、新たな法律を整備すべきだと訴えました。一方、検察は「車は公衆の目にさらされているのでプライバシーの保護の必要性は高くない」として裁判所の令状は必要ないと主張しました。

GPSを使った捜査をめぐっては各地の裁判所で違法性が争われ、判断が分かれています。最高裁は早ければ来月にも判決を言い渡す見通しで、初めての統一的な判断が注目されます。

今回の捜査では、被告や仲間のほか、被告の交際相手が使用していた車なども監視の対象になりました。

裁判の記録などによりますと、警察は平成25年5月から12月まで、被告などが使っていた合わせて19台の車やオートバイの見えにくい場所に、手のひらに乗る大きさのGPS端末を取りつけ、監視を行いました。

捜査では、警察官が携帯電話からインターネット上の専用のサイトにアクセスして、端末の現在地を検索し、画面の地図上に表示された車などの位置を確認していました。位置を自動的に追跡されることはありませんが、被告の弁護士が端末を貸し出した会社から取り寄せた資料などによりますと、位置情報の検索は1分ごとに行われることもあり、3か月ほどの間に1200回以上調べられていた端末もあったということです。

被告などはGPS端末を取りつけられたことを知らず、仲間がオートバイを修理に出したときに初めて気付いたということです。また、警察がラブホテルの駐車場やコインパーキングといった私有地に無断で立ち入って端末を取り付けていたことや、端末を使ったことを捜査報告書に書かず、検察に伝えていなかったことも裁判の中で明らかになりました。

被告の弁護を担当する亀石倫子弁護士は、警察庁が全国に通知している「犯罪を構成するような行為を伴わないこと」という取りつけのルールに違反していたと指摘しています。

亀石弁護士は「警察に任せておいたら、『保秘の徹底』といって自分たちが作ったルールさえ守らずに拡大解釈して乱用されていく。司法のチェックを受けながら適正に捜査をしてもらいたい」と話しています。

一方、警察は、GPS端末を捜査に使った理由について、被告らが盗難車などを使って広域を移動し、夜間に短時間のうちに犯行に及んでいたことから、通常の尾行や張り込みが難しかったためだと説明していて、今回は、GPS端末を使う必要性が高かったとしています。

GPS端末を使った捜査は、警察庁が通知した運用の要領にしたがって、全国の警察で行われています。警察庁は、平成18年に、捜査員の尾行が困難で、捜査上、特に必要がある場合に使うことができるとした運用の要領を全国に通知しました。

要領では、GPS端末を使った捜査を尾行や張り込みのように令状がなくてもできる「任意捜査」と位置づけています。このため、プライベートな場所に立ち入る捜索や、身柄を拘束する逮捕のような、プライバシーの侵害や行動の自由の制約を伴う「強制捜査」とは異なり、事前に裁判所の令状を取る必要はないとしています。

全国の警察は、この要領に基づいてGPS端末を使用し、車で広範囲に移動して窃盗を繰り返す事件などの捜査で、容疑者の検挙につなげています。

要領の具体的な内容は非公開とされていましたが、先月、GPS捜査をめぐって争われている裁判の中で、警察庁が捜査に影響が出ることを理由に、GPS端末について捜査書類に記載しないことや、取り調べの中で容疑者に端末の使用を明らかにしないことなどを全国の警察に指示していたことがわかりました。

GPS端末を使った捜査が裁判所の令状がいらない「任意捜査」なのか、令状を取って本人に示す必要がある「強制捜査」なのかをめぐっては、裁判所の判断も分かれています。

こうした中、警察庁は、去年9月、任意捜査という位置づけは変えないまま、「令状の取得も1つの適切な方法」と記した文書を全国の警察に送りました。

このうち、千葉県警察本部は、去年、自動車の窃盗事件の捜査で全国で初めて裁判所の令状を取ってGPS端末を取り付けました。千葉県警は、捜査に一定の見通しがついた段階で本人に対してGPS端末の使用を伝えることや、端末を取り付ける際に私有地に無断で立ち入らないことなどを条件に令状を申請したということです。

また、22日、最高裁で行われた弁論で、検察は、最高裁の判決の内容しだいだと前置きをしたうrで、「今後は、緊急の場合を除き、裁判での立証に万全を期する観点から、裁判所の令状が出た場合に絞ってGPS捜査をすることになるものと考えられる」と述べました。

GPS端末を使った捜査の違法性については各地の裁判所で争われていますが、判断が分かれています。

判断が分かれている理由は、GPS端末で居場所を把握される捜査対象者にとって、プライバシーの侵害の程度が小さいのか、大きいのか、解釈が異なっていることです。

プライバシーの侵害の程度が小さいと捉えた場合は、捜査機関が裁判所に令状を申請して許可を得る必要がなく、本人に伝える必要もない「任意捜査」の範囲となり、違法ではないと判断されています。去年7月に言い渡された広島高等裁判所の判決では、GPS端末を使った捜査を「任意捜査」と捉え、その理由として、「車は通常、公衆の目にさらされていて、その位置情報は第三者に知られないことが期待されるようなものではなく、プライバシーとして保護する必要性は高くない」と指摘しました。

一方で、プライバシーの侵害の程度が大きいと捉えた場合は、捜査機関の判断だけで実行することが許されない「強制捜査」となり、令状を取らなければ違法だという判断が示されています。

今回、最高裁で審理されている窃盗事件の1審の大阪地方裁判所は、「強制捜査」と判断したうえで、「GPS捜査は、プライバシーの保護が期待されるような場所でも位置情報を取得できる。尾行の補助手段とは言えず、大きなプライバシー侵害を伴う」と指摘しました。また、別の窃盗事件の判決で、名古屋高等裁判所も「強制捜査」としたうえで、「位置情報を分析することで交友関係や信仰している宗教、思想や趣味などの個人情報を網羅的に明らかにでき、プライバシーを大きく侵害する危険性がある」という判断を示しました。

さらに、「強制捜査」と捉えた場合、捜査機関や国がとるべき対応についても判断が分かれていて、大阪地裁は「令状を取ることを検討すべきだった」と指摘した一方、名古屋高裁は「GPS捜査に関する新たな法律を作ることを検討すべきだ」としています。

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